大相撲と暗室とソルティドッグ
2004.05.12 Wednesday
学生時代の私、生意気にも
”行き付けのバー”なるものがありました。
そこのチーフバーテンダー(オーナーと二人でやってはる店でした)
のTさんは、大相撲が大好き。
「サワちゃん(仮)、京都場所の券、お客さんに譲ってもらったけど
一緒に見に行けへん?」
「おお!凄い、一度行ってみたかったんですよ〜」
平日の午後、Tさんの友人はお仕事だということで、
学生の私に、大相撲観戦のお誘いがまわってきた。
Tさんは、私の大学のOBでもあり、
元体育会ということで、スポーツの話題でよく盛り上がっていた。
「幕内のスター力士がそ揃ってんで」
「うわあ、私、サークルのカメラ持っていきますよ」
2階の椅子席だけど、生の迫力は、きっと凄いに違いない。
●
観戦当日朝、新聞部の部室に参上。
「F3と、400mmレンズと、モードラ、今日中に返すんで、お借りします」
F3は、ニコンの素敵なマニュアル一眼レフカメラ、
特大の望遠レンズ、
モードラとは、モータードライブの略で、マニュアルカメラに、連写機能を付加する。
スポーツ取材には欠かせない、黄金ユニットなのだ。
白黒で撮って、部室で現像してしまおうという、魂胆。
部室には超レトロな暗室なんてものが存在していた。
薬品を調合して、白黒フィルムなら、自分で現像、さらに印画紙への焼付けまでできてしまう。
大荷物を抱えて、いざ大学と目と鼻の先の会場へ。
●
席にたどりつくと、すでに、缶ビール片手にTさんが興奮していた。
「サワちゃん、十両からずっと見てんねんけど、もう最高やなあ」
「Tさん、いいもの持ってきましたよ」
円筒型のケースから、レンズを取り出す。
「ごっついレンズやな」
「今、セットして、撮りまくりますからね」
相撲甚句、髪結い実演、幕内入場、横綱土俵入り(当時はA関休場、T関のみ)、
そして、待望の幕内取り組み。
「キャー、Mの海、T尾〜」
やっぱり、ミーハーな自分。そして、その人の取り組みがやってきた。
「M泉やで」
「おお、シャッターチャンスですね」
豪快に塩をまく、M泉関の、決定的瞬間を狙う。
カシャ カシャ カシャ
リズミカルなシャッター音、塩まきの瞬間、上手く写っていればいいなあ。
●
歴代横綱ネーム入り湯呑やら、大相撲グッズを買いこんだTさんに、
天ぷら蕎麦を奢ってもらった後、再び部室へ。
「暗室、つかっていい?」
後輩諸君にことわって、早速、現像にとりかかる。
<現像の手順>
1 フィルムを、現像タンクに装着
暗闇の中での作業→ケースからフィルムを出し、芯にまきつけて、密閉する。
(本当に何も見えません〜)
2 現像液の調合
あらかじめ、ポットでお湯を沸かしておく。
大きなビーカーに現像液を入れ、所定の倍率に水で薄める。
ビーカーを、湯船にして、薄めた液を○度まで温める。(何度か忘れました)
(冬は、温度が上がるのが遅いので、大変です)
3 タンクに液を満たす
フィルム全体に液が行き渡るように、タンクについている取っ手を回す。
ひたすら回す。3分〜5分(場合によってはもっと長い時も)浸したら、
液を流し、いったん水をいれて、濯ぐ。
さらに、フィルムにネガ画像を定着させる、定着液をタンクに入れて、
同じように、3分くらい回す。
(ここまでやって、やっとタンクから取り出せる)
水で洗ったものを乾かして、無事、ネガのできあがり。
撮れた画像を見てみる。
我ながら、ちゃんと撮れてるよ〜。黄金ユニット万歳!
その中でも、抜群のM泉関の塩まきの写真
(力士が手を上げているところと、まかれた塩が放射状に降ってくるところ、
バックのお客さんの嬉しそうな顔までもが、バッチリ撮れたのだ)
を、印画紙いっぱいに焼いてしまった。
「何、焼いてはるんですか……」
「見て見て、よく撮れてるやろ〜」
後輩に呆れられながらも、私はこの出来映えを自慢した。
●
夜、Tさんの所へ写真を持って行く。
「ソルティドッグ、お願いします」
披露する前にまず、注文して。
「今日は楽しかったなあ」
「Tさんに、誘って頂いた御礼の品をお持ちしました」
ウォッカのグレープフルーツジュース割り、
グラスの淵に塩のスノースタイル。
ソルティドッグと引き換えに、こちらのブツを渡す。
「おおっ!M泉」
喜色満面と、いった感じのTさん、思いどおりの反応が返ってきた。
「今日のベストショットです」
「よっしゃ、でかした。店に飾るで〜」
Tさんの作るカクテルは、いつもと変らずおいしかった。
写真は、即効、リキュール類の置かれている棚の淵に、ピンで止められる。
M泉の塩まきにかけて、ソルティドッグを頼んだと言うまでもなく、
「一杯目はサービスや」
う〜ん、太っ腹!
楽しい、楽しい、学生時代の一日……
【これが、その写真】
”行き付けのバー”なるものがありました。
そこのチーフバーテンダー(オーナーと二人でやってはる店でした)
のTさんは、大相撲が大好き。
「サワちゃん(仮)、京都場所の券、お客さんに譲ってもらったけど
一緒に見に行けへん?」
「おお!凄い、一度行ってみたかったんですよ〜」
平日の午後、Tさんの友人はお仕事だということで、
学生の私に、大相撲観戦のお誘いがまわってきた。
Tさんは、私の大学のOBでもあり、
元体育会ということで、スポーツの話題でよく盛り上がっていた。
「幕内のスター力士がそ揃ってんで」
「うわあ、私、サークルのカメラ持っていきますよ」
2階の椅子席だけど、生の迫力は、きっと凄いに違いない。
●
観戦当日朝、新聞部の部室に参上。
「F3と、400mmレンズと、モードラ、今日中に返すんで、お借りします」
F3は、ニコンの素敵なマニュアル一眼レフカメラ、
特大の望遠レンズ、
モードラとは、モータードライブの略で、マニュアルカメラに、連写機能を付加する。
スポーツ取材には欠かせない、黄金ユニットなのだ。
白黒で撮って、部室で現像してしまおうという、魂胆。
部室には超レトロな暗室なんてものが存在していた。
薬品を調合して、白黒フィルムなら、自分で現像、さらに印画紙への焼付けまでできてしまう。
大荷物を抱えて、いざ大学と目と鼻の先の会場へ。
●
席にたどりつくと、すでに、缶ビール片手にTさんが興奮していた。
「サワちゃん、十両からずっと見てんねんけど、もう最高やなあ」
「Tさん、いいもの持ってきましたよ」
円筒型のケースから、レンズを取り出す。
「ごっついレンズやな」
「今、セットして、撮りまくりますからね」
相撲甚句、髪結い実演、幕内入場、横綱土俵入り(当時はA関休場、T関のみ)、
そして、待望の幕内取り組み。
「キャー、Mの海、T尾〜」
やっぱり、ミーハーな自分。そして、その人の取り組みがやってきた。
「M泉やで」
「おお、シャッターチャンスですね」
豪快に塩をまく、M泉関の、決定的瞬間を狙う。
カシャ カシャ カシャ
リズミカルなシャッター音、塩まきの瞬間、上手く写っていればいいなあ。
●
歴代横綱ネーム入り湯呑やら、大相撲グッズを買いこんだTさんに、
天ぷら蕎麦を奢ってもらった後、再び部室へ。
「暗室、つかっていい?」
後輩諸君にことわって、早速、現像にとりかかる。
<現像の手順>
1 フィルムを、現像タンクに装着
暗闇の中での作業→ケースからフィルムを出し、芯にまきつけて、密閉する。
(本当に何も見えません〜)
2 現像液の調合
あらかじめ、ポットでお湯を沸かしておく。
大きなビーカーに現像液を入れ、所定の倍率に水で薄める。
ビーカーを、湯船にして、薄めた液を○度まで温める。(何度か忘れました)
(冬は、温度が上がるのが遅いので、大変です)
3 タンクに液を満たす
フィルム全体に液が行き渡るように、タンクについている取っ手を回す。
ひたすら回す。3分〜5分(場合によってはもっと長い時も)浸したら、
液を流し、いったん水をいれて、濯ぐ。
さらに、フィルムにネガ画像を定着させる、定着液をタンクに入れて、
同じように、3分くらい回す。
(ここまでやって、やっとタンクから取り出せる)
水で洗ったものを乾かして、無事、ネガのできあがり。
撮れた画像を見てみる。
我ながら、ちゃんと撮れてるよ〜。黄金ユニット万歳!
その中でも、抜群のM泉関の塩まきの写真
(力士が手を上げているところと、まかれた塩が放射状に降ってくるところ、
バックのお客さんの嬉しそうな顔までもが、バッチリ撮れたのだ)
を、印画紙いっぱいに焼いてしまった。
「何、焼いてはるんですか……」
「見て見て、よく撮れてるやろ〜」
後輩に呆れられながらも、私はこの出来映えを自慢した。
●
夜、Tさんの所へ写真を持って行く。
「ソルティドッグ、お願いします」
披露する前にまず、注文して。
「今日は楽しかったなあ」
「Tさんに、誘って頂いた御礼の品をお持ちしました」
ウォッカのグレープフルーツジュース割り、
グラスの淵に塩のスノースタイル。
ソルティドッグと引き換えに、こちらのブツを渡す。
「おおっ!M泉」
喜色満面と、いった感じのTさん、思いどおりの反応が返ってきた。
「今日のベストショットです」
「よっしゃ、でかした。店に飾るで〜」
Tさんの作るカクテルは、いつもと変らずおいしかった。
写真は、即効、リキュール類の置かれている棚の淵に、ピンで止められる。
M泉の塩まきにかけて、ソルティドッグを頼んだと言うまでもなく、
「一杯目はサービスや」
う〜ん、太っ腹!
楽しい、楽しい、学生時代の一日……
【これが、その写真】
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